| =柴草玲『レクイエムを語る2』= 
 ■私もダメンズ会員■
 
 
 「私も、こういう声(ソフトな歌声)をしているので、柴草さんはヒーリング系ですねとか、癒し系ですねといわれることがあるんですけど・・・。実は癒し系と言う言葉って、嫌いなんですよね。なんか自分に対して都合の悪い、辛い突っ込みをしなさそうな人を、癒し系と持てはやしている感じがして、非常に都合がいい感じがするんです」
 
 
 ―みんな、イイ子イイ子してもらいたいんですよね。
 イイ子してもらいたいのなら、まず自分からやらないとね。
 「そうですよね。でもけっこう、そういう人(イイ子イイ子してもらいたいと思っている人)に対して、仕方ないなあ〜とかって、なっちゃったりしませんか?」
 
 
 ―う〜ん?! それが恋の魔法というやつなのかな。それとも母性本能?!
 「ですかね。『SPA』という雑誌に《ダメンズ・ウォーカー》という漫画があるんだけど、それを読むたび、駄目な男ばかりを渡り歩いてしまう女達って、いっぱいいるんだなと思うし、私もその会員になれると思うんですよ(笑)。それと、なんだかんだいっても、自分は結局、本当は尽くしたかったりするのかな? と思うこともありますよ」
 
 
 
 
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|  | ■すべてを放り出して専業主婦■ 
 
 ―そうなんだ。私なんかは、幼い頃から母親に、女はこういうもの(男が養うもの、男に従うもの)という、育てられ方を刷り込まれているところがある。だけど思春期が70年代ということもあり、男女平等、フェミニズムみたいなところに焦点が当たり、仕事をはじめた80年代は、キャリア・ウーマンという言葉に代表されるように、女性が自立していくことを促された。そうした男女間のコンサバティブな考えと、リベラルな考えにはさまれて、葛藤をしているんだけど・・・。玲ちゃんの世代でもそういうところはあるの?
 「ありますね。母や祖母が典型的な古い女の生き方ではないですけれど、そういう人たちなので、自分の中にもそういう血を感じるところはあります。だからときに、これまでやってきた音楽をすべて放り出して、専業主婦ではないですけれど、ただただ尽くすという。そういうのに憧れているときもありつつ、でもそれでは絶対に駄目だというのもわかっているし・・・」
 
 
 
 ―そういう憧れを持っているんだ!!
 「憧れというか、幻想かもしれないですね。憧れていると思い込んでいるだけなのかもしれない」
 
 
 
 
 
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| ■メジャー・セブンと分数コード■ 
 
 ―この辺で、サウンド的なところを伺いたいと思うんですが。今回のアルバムでは、音の世界観というか、イメージみたいながあったのですか。
 「ひとことで言ってしまうと、私は基本的に美しいものというのが、絶対にあるんです。美しいといって、ただキレイなだけではなくて、よく観てみると、聞いてみると隙間隙間に、毒とか、したたかさがある。そういうものが混ざった美しさというイメージを、サウンド作りでは漠然と持っているんです。たとえば、きれいなコーラスをいれたりもするけれど、ノイズも入れたりする。「レクイエム」も、リズムだけ聞いてみるとノイジーな感じなんですよ。そこにいろいろな音が加わって、結果的には、美しいものになっているんです」
 
 
 ―なるほどね。本当の美しさ、人が感動する美しさというものには、毒が含まれていたりしますからね。音楽的に、ベースになっているものとかってあるんですか。
 「ずっとクラシックをやってきたので、それはあると思うんですよ。特にバッハと、後はラベルやドビッシーといった、コジャレタフランス者のクラシックが好きですね。その辺の影響は、相当あると思います。それから中学生の頃に、オフコースをはじめとしたニューミュージックが流行っていて、あの辺のメジャー・セブンな感じが好きですね。20歳ぐらいからジャズも加わってきて、私の作るメロディやサウンドは、そういったところが基本に鳴っているんですよ。中でもメジャー・セブンと分数コードが好きですね。ギタリストには、嫌がられますけど(笑)」
 
 
 
 
 
 
 
 
 text by Mika Kawai
 
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